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2024年10月

2024年10月31日 (木)

2024年9月6日(金)公開『夏目アラタの結婚』

出演:柳楽優弥/黒島結菜/中川大志/市村正親/他

監督:堤幸彦

 

あべのアポロシネマです。

本日は乃木坂太郎原作の大人気漫画「夏目アラタの結婚」を『ケイゾク』や『TRICK』、『SPEC』など数々の名作を手掛けてきた堤幸彦監督がメガホンを取った今作『夏目アラタの結婚』のご紹介です。

 

乃木坂太郎さんと言えば過去にドラマにもなったヒット作「医龍-Team Medical Dragon-」を生み出した漫画家として知られています。

そんな乃木坂さんが2019年から2024年にビッグコミックスペリオールで連載したサスペンス作品が今作『夏目アラタの結婚』になります。

 

主人公はタイトルの通り夏目アラタ(柳楽優弥)。

児童相談所で働く公務員です。

アラタは自分が受け持つ連続バラバラ殺人事件の被害者遺児である少年、山下卓斗から

「父を殺した犯人に代わりに会って欲しい」とお願いされます。

卓斗は殺された父親の見つかっていない頭部の在処を犯人から聞き出したいと願っていました。

その為に犯人に遺族とバレない為にアラタの名前を勝手に語って犯人と文通を行っていたのです。

そして、手紙に書かれた「直接会って話したい」という犯人の言葉を受けて、

卓斗は夏目アラタに正直に顛末を話して、

犯人と直接会いお父さんの見つかっていない頭部の在処を聞き出して欲しいとお願いをしてきたというわけです。

無断で名前を使われていたにも関わらず、しかもこんな無茶なお願いを断らず快く引き受けてしまうのが夏目アラタという人物で、

ここから事件の真相を暴く為に奔走する事になってしまう訳です。

 

そんな重たい感じで物語が始まる今作なのですが、この作品はとにかく駆け引きが面白い作品です。

連続バラバラ殺人事件の容疑者として捕まっている女性、品川真珠(黒島結菜)とアラタの面会シーンは最初から最後まで本当にスリリングです。

アラタと真珠が結婚するまでのスピード感にも圧倒されますし、作中何度も何度も繰り返される面会シーンがとにかく凄いです!

拘置所でのアラタと真珠のやり取りがやはりこの作品の肝!

殺人犯としての不気味さと時折見え隠れする無垢で純真な心が入り混じる真珠。

面会は常にスリリングでありながら真珠の魅力も十二分に伝わるのと同時にアラタという人物がどの様な行動原理で動いているのか等もこのやり取りでしっかり描かれます。

作品の性質上この面会シーンと法廷シーンがかなりのウェイトを占める本作なのですが、予測不能の物語展開と胸アツの心理戦は本当に楽しめました。

物語がどんな風に転んでいくのか原作を読んでいない、調べたりもしていなかったので、この作品の手の上で大分転がされました!

是非この作品に対して前知識を持っていない方はそのままの状態でこの映画をご鑑賞頂く事を強くお勧めします!

黒島結菜さんが演じた品川真珠の怪演も勿論ですが、

チョイ悪で真っ向勝負な夏目アラタを演じ切った柳楽優弥さん、

真珠の無実を信じる弁護士宮前役の中川大志さん、

真珠の本心を疑う裁判長役の市村正親さん、

拘置所の無口な刑務官役の今野浩喜さんなど、

どの配役もインパクトがあり素晴らしく、見終わった後も胸に残るものだったので、

そちらもお伝えさせて頂きます。

 

そして最後にテーマ曲になっているオリヴィア・ロドリゴの「ヴァンパイア」。

エンドロールで流れるこの曲は作品中の真珠の想いを感じさせる楽曲になっていて、作品に本当にマッチしていていました。

エンドロールでこの曲を大音量で楽しめるというのもこの作品のグッドポイントの一つかもしれません。

 

この手の作品はまずネタバレ無しで楽しんで頂きたい作品なのでメルマガ作成にも大変気を遣います。

『夏目アラタの結婚』もまさにそういう作品です。

とにかくまず観てみて!としか言えないのがつらい所です。

夏目アラタがどんな経緯で結婚に至ったか、事件に隠された真実は?

物語はどの様な結末を迎えるのか?

謎多きこの映画に是非飛び込んでアラタと一緒に真実に迫ってみて下さい。

どんな結末がアラタと真珠を待っているのか。

どんなエンディングがあなたを待っているのか!

あべのアポロシネマで皆様のお越しをお待ちいたしております。

 

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

最近楽しい事をあんまりしていないので

旅行でも行きたいです。

2024年10月24日 (木)

2024年8月1日(金)公開『インサイド・ヘッド2』

声の出演:小清水亜美/大竹しのぶ/小松由佳/落合弘治/浦山迅/多部未華子/他

監督:ケルシー・マン

 

 

こんにちは。あべのアポロシネマです。

本日は、第88回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した映画『インサイド・ヘッド』の続編で、7月24日の時点で世界累計興行収入において『アナと雪の女王2(2019)』を抜いてアニメーション映画史上最大のヒット作となった『インサイド・ヘッド2』をご紹介いたします。

 

映画の冒頭でも前作の振り返りがありますので、前作を知らない方でもご鑑賞いただけます。

因みに前作は、突然の引っ越しで不安定になった11歳の少女ライリーの頭の中で起こる、「喜び[ヨロコビ]、「悲しみ[カナシミ]」、「怒り[イカリ]」、「嫌悪[ムカムカ]」、「恐れ[ビビリ]」という5つの感情を表すキャラクターの混乱やぶつかり合いを描いた作品でした。

今回は彼女が高校進学という人生の転機を控え、今までと違って部活や友人関係すべてがうまくいかず戸惑う中、ある日「心配[シンパイ]」率いる<大人の感情>たちが現れることにより“感情”に変化が訪れることから始まります。

「ライリーの将来のために、あなたたちはもう必要ない。」という[シンパイ]たちの暴走により、追放される[ヨロコビ]たち。巻き起こる“感情の嵐”の中で、ライリーは自分らしさを失っていく……。

 

大人になるための“新しい感情”として登場するのが、最悪の将来を想像し、あたふたと必要以上に準備してしまう[シンパイ]、小さな身体と大きな瞳で、いつでも周りの誰かを羨んでいる[イイナー]、どんなときも退屈&無気力で、片時もスマホは手放さない[ダリィ]、いつもモジモジしていて、恥ずかしさがMAXになるとフードで顔を隠す[ハズカシ]の4人。

感情についての研究はかなり進んでいて、人間の感情は今回のキャラクター数以上にあるそうなのですが、今回は若者(ティーンエイジャー)にとって難しく、ある意味ミステリアスなものを選んだそうです。

ティーンエイジャーではないですが、大人の私の中にも[シンパイ]は確かに居て、感情をかき乱しているのをヒシヒシと感じております……。劇中では声優を多部未華子さんが担当されており、心配してくれるのも優しさなのかと、中々憎めない可愛いキャラです。

そして[イイナー]は、研究によるとライリーぐらいの子どもたちの中にしっかりと存在する感情(羨望)だそう。目が大きくて小さいのも可愛いのに、「いいな~。」と羨ましがるのがなんとも堪りません!

[ダリィ]は、とても若者っぽい!携帯を使いこなし過ぎているのが如何にもって感じです。ずっと体が傾いていて、ダルすぎてソファーと同化しそうになっている姿も面白い奴です。

そして[ハズカシ]。分かりますよ……。大人になると、子どもと違って「恥ずかしい!」って思う場面が増えていますものね。体が大きいのに恥ずかしがり屋なの、可愛いですよね。

新キャラ達もいい子たちなんだよな~。

 

今回も色々と考えさせられるといいますか、自分がライリーよりも長く生きている=経験を積んできたからこそ『わかる!』部分が多く、アニメなのでお子さまが観て楽しめるのはもちろんなのですが、大人も深く心に刺さる作品になっているのです。そりゃ大ヒットを記録するわけです。大人になればなるほど、お子さまに観て欲しい作品なのかも知れません。安心して一緒に観られるのがいいですよね。

 

そして監督ケルシー・マンのメッセージが良い!!

「この映画は、自分自身を受け入れることをテーマにしています。ダメなところも含めて、自分を愛すること。誰しも愛されるために、完璧である必要はないのです。」

心を大きな愛で抱きしめて欲しい方、感情移入しすぎて、ライリーの戸惑いに心が締め付けられることもあるかもしれません。でもこの映画が、この監督の言葉が、癒してくれるはずです。

 

今年はピクサーで大人泣きの夏。汗ではなく涙出してスッキリするのも、涙活になっていいですよ!

あべのアポロシネマで是非ご覧ください。

 

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★☆執筆者紹介☆★

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せきぐち

つい先日鑑賞した『デッドプール&ウルヴァリン』(R15+指定作品)と同じテーマで描かれており、とても不思議な気持ちです。(どちらも素晴らしい作品です。)

2024年10月21日 (月)

2024年7月19日(金)公開『怪盗グルーのミニオン超変身』

声の出演:笑福亭鶴瓶/片岡愛之助/中島美嘉/山田杏奈/他

監督:クリス・ルノー

 

 

こんにちは。あべのアポロシネマです。

本格的な夏と梅雨で毎日蒸し暑いですね。気が付けばお子様たちはもうすぐ夏休み。みんなでジメジメ暑さを吹き飛ばす映画ないかな~?と思っていませんか!

そんな方に是非お勧めしたいのが、今回紹介する『怪盗グルーのミニオン超変身』。

過ごしにくい外より快適な館内で、難しいことは考えない能天気ムービーを観ませんか!?

 

前作はスピンオフシリーズ『ミニオンズ フィーバー』が2年前でしたが、メインシリーズでは2017年の『怪盗グルーのミニオン大脱走』以来、実に7年ぶりの新作です!

 

今回のお話は、グルーファミリーには新たな家族“グルーJr.”が誕生し、幸せに暮らしていた。そんなある日、高校の同窓会に出席したグルーは、同級生でライバルだったマキシム・ル・マルと再会する。しかし、マキシムはグルーに強い恨みを抱いており、復讐を企てていた。マキシムから命を狙われるはめになったグルーファミリーは、安全のために新たな町の隠れ家に移り住む。正体がバレないよう名前も身分も変えて生活していた一家だったが、そこにグルーの正体を知るという、悪党を夢みる少女ポピーが現れ……。

 

個人的にはスピンオフよりこのメインシリーズの方が好きです。ミニオンズもこちらの方が生き生きしているように思います。今回も生き生きしていましたね~!!ノリノリです!

正直に言いますと、この映画はお子様がメインターゲットだと思いますので、大人の方が遠慮するのも分かります。

ミニオンたちは子どもっぽいイタズラしまくっているし、ライバル(マキシム)が憧れるものを虫に設定するところもお子様向けだな~と思うのですが……、大人が見ても楽しいですよ!!

だって昔は子どもだったのですから、彼らがテンション上がる気持ちはわかります!よね?

更にお子様向けだからこそ、内容がスッキリとわかりやすく、誰も亡くならず(不死身すぎる。)、観ていて『単純に楽しい』という感想しか出てこないのが凄いのです!!!!!

更に『実写であればこんな画角から撮れるわけない!』と思う程の臨場感あふれるカメラの動きで、ミニオンたちを追っていて、アトラクション要素がかなり増しています。マシマシです!

観ている側を楽しませてくれる、CGだからこそ作り出せる世界が堪りません!!

 

今年の夏はアニメデビューもいかがでしょうか?(といいつつ、この作品、ミニオンの可愛さで大人のお客様も多いのですよ。)新しい自分Jr.の誕生かもしれません。

疲れた脳の夏休暇に是非、あべのアポロシネマでご覧ください。

 

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★☆執筆者紹介☆★

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せきぐち

夏は冷た~~い緑茶が飲みたくなりますね。

2024年10月18日 (金)

2024年6月28日(金)公開『ルックバック』

声の出演:河合優実/吉田美月喜/他

監督:押山清高

 

あべのアポロシネマです。

本日は少年ジャンプで「チェンソーマン」を連載する人気作家、藤本タツキさんの原作を押山清高監督がアニメーション映画化した傑作『ルックバック』のご紹介です。

 

藤本タツキさんの代表作と言えばやはり連載2作目の「チェンソーマン」です。

この作品は「鬼滅の刃」、「呪術廻戦」と同時期に少年ジャンプで連載され大ヒットした作品です。

同じ紙面で王道の名作達に囲まれながら、「チェンソーマン」は少年誌において、いわゆる王道とは一線を画す、ダークで乾いた世界観で多くのファンを魅了し、アニメ化もされ、話題作として大きな注目を集めました。

現在はジャンプ+で「チェンソーマン」の第2部を連載中で、そちらも話題に事欠かない人気作となっております。

 

さて、この映画『ルックバック』の原作はチェンソーマン第1部が終了したのち、第2部の連載が開始される迄の間に1年ほど期間があり、その間に読み切りの短編としてジャンプ+で発表された漫画作品になります。

読み切りと言いながら143ページもあり、描きたいものを自由に納得できるまで描くという意思を感じさせ、短編と呼ぶには大ボリュームな作品が当時Twitter(現X)で大きな話題となり、様々な考察と議論がなされたのは記憶に新しいところです。

その描写の繊細さと物語の奥深さが合わさり一時はTwitter上でこの話題が出ない日は無いという位、多くの方の意見を毎日見かけたのを覚えています。

私自身もその時ジャンプ+でこの作品を読み、友人とこの作品や藤本タツキさんの話題で色々と話をしたのを憶えています。

 

この作品が映画化されるという話を聞いた時、私は本当にハッとしました。

それは何故か。

この作品がどれほど映像を意識して描かれた作品であるかというのを読んだ時に感じていたからです。

定点から漫画を描く背中を映す視点、田舎道を喜び駆ける様を俯瞰で映す視点、ローアングルからテレビを見る姿を映す視点。

どのシーンをとっても映画的で美しく、儚い一瞬一瞬を鮮明に切り取った本当に素晴らしいものだったからです。

藤本タツキさんの繊細な絵柄、細やかなタッチを忠実に再現するアニメーションとして映画化されるなんて、これは凄い作品になるのではないか。

予告編を観た時、私はそう確信めいたものを感じずにはいられませんでした。

そしてその予想は見事過ぎる程に現実になりました。

音が鳴って、音楽が鳴って、時間の流れ、間があって。

声があって、歩みがあって。

全てを、五感で感じる事が出来るからこそ息づく世界がある。

143ページという単行本1冊にしては少ないページ数を余すところなく表現し、描き切った57分14秒。

映画としては短いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、これをあえて90分に引き延ばしたりせず原作の表現を尊重し続けた結果の時間であると私は思います。

作者の描きたかったものを尊重し、表現を解釈してより拡張し、どなたの琴線にも触れる心の機微をしっかりと描き切った作品。

それが今作『ルックバック』なのです。

私はこのメルマガではいつも控えめに表現させて頂いているのですが、今回ばかりは声を大にしてこの作品をお勧めしたいと思います。

大傑作です。

観て絶対に損はない作品です。

 

この映画は観た後に誰かと話したくなる作品です。

私も本当は内容に踏み込んで色々話してしまいたいところですが、そこをグッと堪えてこのメールマガジンを書いています。

在りし日の漫画を描くという行為、つまりペンとインク、スクリーントーンを使って漫画を描くという行為のもつノスタルジーさや、自分の中にあるものを表現する事の尊さ。

虚像や見栄の中で藻掻くという事。

誰かと支え合い、誰かの救いになるという事。

多くの想いが描かれています。

ルックバックというタイトルである「振り返る」という事、そして「背中を見せる」という事。

これをアニメーションで表現しきった押山監督と、製作スタッフには本当に敬意を表したいです。

もちろん主人公である藤野と京本の声を担当した河合優実さんと吉田美月喜さんの演技力の高さも素晴らしく、あの声あってこそ、この作品に引き込まれたのだと思います。

観終わったら漫画を読み返しても二人の声以外で脳内再生出来ないくらい、二人の声が染み込んでしまいました。

そしてもう一つ、忘れてはならないこの作品の音楽を担当した人物haruka nakamuraさん。

作品に寄り添うという映画音楽のお手本のような素晴らしい楽曲と、エンドロールで流れるharuka nakamuraさんが作曲を手掛け、それをuraraさんが唄う「Light Song」の美しさは本当に心に染み入りました。

映画を観終わってエンドロールで聴くからこそ染み入る楽曲。

これを体験してもらわない手は本当にないと思います。

 

私はこの作品を観た後、凄くすんなりと「この作品の完成形を観た」と心から思えました。

魂が揺さぶられる57分14秒です。

「描き続ける」という、映画のキャッチコピーで使われたこの言葉。

観終わった今でもペンタブに向って線を引き続けるあの音が脳にこびりついています。

出来れば多くの方にこの作品を映画館の音響とスクリーンで体験して頂きたいなと思います。

皆様のお越しをあべのアポロシネマのスタッフ一同、心よりお待ち申し上げております。

 

 

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

ブルーレイ出たら買います。

2024年10月 5日 (土)

2024年8月9日(金)公開『ブルーピリオド』

出演:眞栄田郷敦/高橋文哉/板垣李光人/桜田ひより/他

監督:萩原健太郎

 

あべのアポロシネマです。

本日は『東京喰種 トーキョーグール』の萩原健太郎監督最新作、「マンガ大賞2020」を受賞し国内外で絶賛された月刊アフタヌーン連載中の傑作漫画の実写映画『ブルーピリオド』のご紹介です。

 

この漫画は月刊アフタヌーンの2017年8月号から連載が開始され、東京藝術大学卒の作者、山口つばささんによる美大受験を描いた青春漫画として瞬く間に大きな話題となり、2021年にはテレビアニメ化、今回遂に映画で実写化となりました。

私もかつて大阪芸術大学美術学科に通っていた者として、最初に言わせてください。

実写映画化、本当におめでとうございます!この作品の美大受験描写や葛藤、そして受験に向き合う、絵に向き合う描写は本当にリアルです!

 

この映画を私は何から何まで身につまされる思いで鑑賞させて頂きました。

この感じ、味わった事ある!これ思った事ある!の連続、連続、連続!

美大受験経験者が描く、美大受験経験者のリアルすぎる断片が美大受験を経験した全ての人に本当に刺さる!

映画を鑑賞し終わってあの頃の感情が蘇ってきて、なんだか胸が苦しくなりました。

大きくて邪魔な画板とか、どこに居ても開いていたクロッキーとか、予備校の教室の殺伐とした空気とか、鉛筆をカッターで黙々と削るあの感じとか、フィキサチーフスプレーの臭いとか。

思い出すと何かに取りつかれていたんじゃないかと思う位、人生で一番絵を描いていたあの時期。

どの美大生に聞いても、それぞれに違うドラマがあるんじゃないかと思えるぐらい、誰もが真剣に絵に向き合っていたあの頃。

これを切り取って作品にするという発想が出来た時点で、ひとつアイディアの勝利と言えるのではと思わずには居られないくらい、この作品に最初に出会った時は衝撃を受けました。

そしてこれだけニッチな内容にも関わらず、この作品が全ての人に受け入れられ、楽しまれているという衝撃!

本当に驚きで一杯です。

 

主人公矢口八虎(やぐちやとら)を演じるのは眞栄田郷敦さん。

『東京リベンジャーズ』や『カラダ探し』など様々な作品に出演する急成長中の若手俳優です。

今作での演技も主演として本当に素晴らしく、八虎が抱える虚しさや遠慮、そして打ち込んだものに燃える情熱を本当に見事に体現していました。

八虎は人生に燃えるものを見つけられない不良の青年です。

学年でトップクラスの成績をキープしながら要領よく遊び、誰とでも仲良くなれる人懐っこさも持っている金髪ピアスの青年です。

ある時先輩の描いた油絵を間近で見た事、そして自分が悩みながら描いた絵の意図が人に伝わった事に感動した事で、東京藝術大学を目指すようになる、というのが大まかなストーリーです。

どのキャラクターも本当にハマり役ばかりで素晴らしかったのですが、特に原作とマッチして最高の演技をしていたのが高橋世田介役の板垣李光人さんと大葉真由役の江口のりこさんでした。

この二人の原作再現度の高さは本当に素晴らしかったです。

あと、この作品で感じたのが実写映画化の醍醐味ですね。

作品内には八虎が描いた様々な絵が出てきます。

デッサンや油絵、水彩。様々な方法で描かれる表現豊かな絵の数々が本当に観ていて楽しいです。

絵を描く方法、手段の楽しさも絵の楽しさの一つなのかも知れません。

他のキャラクターが描いた絵も登場しますし、どれも本当に素晴らしかったです。

映画内では絵に打ち込む様や友人との交流と共に、受験当日の張りつめた緊張感や孤独な戦いがたっぷり描かれます。

主題歌を担当するのは近年若者を中心に支持を集めるWurtS(ワーツ)。

書き下ろされた楽曲「NOISE」も映画に本当にマッチしていて素晴らしかったです。

映画という総合芸術において音楽も作品に欠かせないピースの一つです。

全てのパーツが組み重なって、このアートを取り扱う作品をエンターテインメントに昇華させきっているというのが、本当に素晴らしかったと思います。

 

芸術という何かで測ることが出来ないものを題材に、キャラクターとシチュエーションからドラマを生み、その中で生きる青春を描く。

その青春の輝きを、スクリーンを通して全身で感じてみませんか。

きっと胸が高鳴る映画体験になると思います。

あべのアポロシネマで皆様のお越しをお待ち申し上げております。

 

『ブルーピリオド』

詳細はこちら ⇒ https://www.kin-ei.co.jp/cgi-bin/pc/ttl/det.cgi?ttc=24080910

(PC・スマートフォンからご覧ください)

 

あべのアポロシネマのHPはこちら ⇒ https://www.kin-ei.co.jp

 

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

美術は体験!

インスタレーションアートが好きです。

クリスチャン・ボルタンスキーとかオラファー・エリアソンが好きです。

 

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