あべのアポロシネマ最新映画情報バックナンバー

劇場スタッフが実際に映画を鑑賞し、執筆したメールマガジンのバックナンバーです。
※不定期配信

2024年5月17日(金)公開『ミッシング』 »

出演:石原さとみ/青木崇高/森優作/中村倫也/他

監督:吉田恵輔

 

あべのアポロシネマです。

本日は「空白」「ヒメアノ~ル」など社会派な作風の映画を多く撮ってきた吉田恵輔監督が新たに挑んだ新境地の最新作、『ミッシング』のご紹介です。

 

まず、この作品を知らない方の為に簡単にあらすじを書かせて頂きます。

幼い娘が失踪して3ヶ月、未だ見つからない娘を探し日々奔走する夫婦。

徐々に失われていく世間の関心と風化していく事件。

ネット上では叩かれ、謂れのない誹謗中傷を浴び、心を壊しながら、それでも娘を探し再び生きて会う為にもがき続ける失踪した娘の母親、沙織里(石原さとみ)。

想像しただけで胸が張り裂けそうな状況に置かれながら、娘の為に出来る事は全てやる沙織里とその夫の豊(青木崇高)。

沙織里は夫の冷静さに温度差を感じ、苛立ってしまいます。

二人の間には夫婦喧嘩が絶えません。

それでも二人は近隣でビラ配りを行い、情報提供を呼びかけながら、娘の安否を気遣い、日々の全てを捨てて活動を続けています。

家の近くの公園で娘と最後に遊んでいた娘の最終目撃者である沙織里の弟、圭吾(森優作)。

そして唯一3ヶ月経った今も事件の取材を続けてくれる地元テレビ局の優秀な記者、砂田(中村倫也)。

この4人を中心に物語は進みます。

娘を失い全てを捨てて娘を探す母親。

娘を失いながらも気丈に振る舞い、妻を気遣う父親。

失踪した日に娘と一緒に居た母親の弟。

視聴率の為に少しでも事件を印象操作しようとする上層部の命令と母親の想いの間で苦悩する記者。

この四者四様の思いが様々な形でぶつかり合っていく、そういう作品になっています。

 

瞬間瞬間がどのシーンも本当にリアルで恐ろしく、それでいてユーモアに富んでいて、気が付くと物語に没入してスクリーンから全く目が離せないまま1時間59分が過ぎているという、見終わった瞬間に、「ちょっと近年見ない程凄い作品を観たぞ。」という感覚に襲われました。

 

では一体この作品の何がそれほど凄かったのか、これはひとえに「共感」という言葉に尽きます。

母親、父親、弟、記者、なんと全員に「共感」出来てしまうんです。

今まで他の作品を観ていてキャラクターの誰か一人に強く感情移入して観るという事はあった様に思うのですが、誰のどの話を観ても、どの言葉を聞いても「わかる。」しかないんです。

「こういう事あるんだよ。わかる。」「判りすぎる。」と、わかるの連続で、共感し過ぎてしまう程、共感してしまいました。

そしてこの尋常でない様な共感を引っ張り出しているのがこの4人の役者の高い演技力です。

特に凄いのが石原さとみさんの演技力で、これ程までなのかと驚かずにいられない程、魂の入った演技が冒頭からラストまでノンストップで続き、そのパワーに引っ張られる形で我々観客も物語に没入していくので、やっぱり役者さんの本気って凄いものなんだな、と思わずにいられませんでした。

また弟役を演じる森優作さんの演技が本当に素晴らしく、私自身が姉のいる弟なこともあり、共感できるところが本当に多かった様に思います。

ずっと胸が痛かったです!

さらに、夫を演じた青木崇高さんの悲哀と冷静な立ち振る舞いにも私自身、妻がいる身として大きく共感しましたし、会社組織で働く社会人としての砂田を演じた中村倫也さんの葛藤にも本当に胸がえぐられました。

全員に共感して心がジェットコースターみたいに揺れ動くという、今までに体験したことがない感情の中、作中ずっと登場人物全員の幸せを祈りながら観ずにはいられませんでした。

 

さて、そんな今作は本や漫画などの原作はなく、吉田監督が自ら書き下ろした脚本を基に描かれた物語です。

各シーンのリアルなやり取りと各出演者の鬼気迫る演技、それを画角に見事に収め続けた監督の手腕とディレクション能力の高さには本当に恐れ入りました。

世武裕子さんが担当した音楽も素晴らしく、エンドロールで流れる音楽の余韻で心が洗い流される様でした。

 

出演している役者さんのファンは勿論の事、少しでもこの文章を読んで気になった方は是非映画館でこの作品を堪能して頂きたいと思います。

この物語の結末がどんな着地を迎えるのか、皆様の目で是非確かめて頂きたい作品です。

多くの事を感じて多くの事を考えるきっかけになる、本当に多くの人に見て頂きたい物語になっています。

誰にでも起こりうる、いつ起こってもおかしくない様な恐ろしい事件の中で、今一度自分のあり方を見つめなおせる本当に考えさせられる作品になっています。

是非あべのアポロシネマでご覧下さい。皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

  

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

最近、必要に駆られて刺繍を始めてみたのですが、

不器用なので早くも挫折気味です。

2024年4月19日(金)公開『陰陽師0』 »

出演:山崎賢人/染谷将太/奈緒/板垣李光人/他

監督:佐藤嗣麻子

 

いつもあべのアポロシネマのメールマガジンをお読みいただき、ありがとうございます。

本日は『エコエコアザラク』シリーズや『アンフェア』シリーズを手掛けた

佐藤嗣麻子監督の最新作『陰陽師0』のご紹介です。

今作は夢枕獏さんの人気小説シリーズ『陰陽師』をベースに、夢枕さんに全面協力してもらう形で、

日本で最も有名な陰陽師、安倍晴明(あべのせいめい)が陰陽師になる前の学生時代を描いた完全オリジナルストーリーとなっております。

今まで陰陽師シリーズに触れて来なかった初見の方は勿論、夢枕獏さんの小説が好きな方、

岡野玲子さんの漫画版が好きな方、過去に野村萬斎さんが主演した映画『陰陽師』が好きな方など、

昔からの陰陽師ファンの方にもしっかり満足して楽しんで頂ける、

原作以前を描いた全く新しい物語『陰陽師0』を、気持ちをリセットしてご鑑賞頂ければと思います。

 

夢枕さんから直接名指しで指名され制作を開始したという佐藤監督が、

『ゴジラ-1.0』で第96回アカデミー賞視覚効果賞を受賞し、歴史的快挙を成し遂げた「白組」とタッグを組み、

呪術や怪異、そしてド派手なアクションシーンなどを作品にふんだんに盛り込み、

平安時代の世界を独自の豪華絢爛な世界観で表現されていて、

上映中全てのシーンが美しく、躍動的で、非常に見応えのある作品になっておりました。

陰陽師になる為の学校であり、省庁でもある「陰陽寮」で生活しながら勉強中の学生、安倍晴明。

暦、天候、呪など様々な学問を学びながら暮らしていますが他の学生と違い、

晴明自身に出世欲や上昇志向というものはなく、人嫌いで変わり者。誰にも心を開きません。

しかしその才はずば抜けており、学生という身分でありながら寮の外にも名が知れ渡るほどの有名人になっています。

元々の原作「陰陽師」にも安倍晴明のバディとして登場する源博雅(みなもとのひろまさ)との出会いのシーンも描かれ、

博雅が晴明に助けを求めてやってくる事で二人に絆が生まれていく様もしっかり描かれているので、

そういうシーンも原作ファンには嬉しいシーンなのではないでしょうか。

 

さて、この作品の顔、安倍晴明を演じるのは山崎賢人さん。

キングダムやゴールデンカムイでは男らしくて荒々しい役を豪快に演じておられましたが、

今回はクールで聡明な役どころ。

そんな今までと180度違った役どころでも見事に演じ切っているのが流石でした。

そしてそんなクールなキャラクターながら、作中にアクションがしっかりあるのも『陰陽師0』の面白い所で、

カッコいい山崎さんを作中全開でお楽しみ頂けるというのもこの作品の良い所でございます。

また、バディを務める染谷将太さんの源博雅も非常に良かったです。

柔らかで優しそうな貴族感のある源博雅がとてもはまっていて

コンビでの掛け合いは本当に楽しそうで、信頼感を感じる素晴らしいものになっていました。

それ以外にも帝(みかど)を演じた板垣李光人さんや徽子女王(よしこじょおう)を演じた奈緒さんなど

若い俳優の存在感が光る素晴らしいキャスティングと演技を見る事が出来て本当に楽しく見ることが出来ました。

それも非常に良かった点として挙げさせていただきます。

 

最後に一点、この作品は作品全体の衣装美術、音楽など映画全体の細やかな部分にも

非常に強いこだわりを感じ、作品を通して楽しむ事が出来たという点も付け加えさせて下さい。

徽子女王の衣装や安倍晴明の衣装は特にこだわりを感じる作りをしていて

興味津々でスクリーンに釘付けになってしまいましたので、

そういう部分もお楽しみください。

かつ、BUMP OF CHICKENが歌う「邂逅」が流れるエンドロールも。

トータルで本当に素晴らしい、楽しい映画体験でした。

 

さて、皆様も歴代最強の陰陽師と名高い平安の陰陽師、

安倍晴明の前日譚を描いた映画『陰陽師0』をご鑑賞にあべのアポロシネマへお越しくださいませんか?

阿倍野区は安倍晴明ゆかりの地としても知られる地域です。

あべのアポロシネマで映画を見て頂く事で一層安倍晴明を身近に感じてみませんか?

スタッフ一同皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

 

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

岡野玲子さんの陰陽師の漫画が読んでみたいです。

めちゃくちゃ面白いらしいです!

2024年4月19日(金)公開『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』 »

声の出演:島崎信長/内田雄馬/興津和幸/浦和希/他

監督:石川俊介

 

あべのアポロシネマです。

本日は『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』のご紹介です。

週刊少年マガジンで2018年35号より連載が開始され、

現在も続く大人気サッカー漫画「ブルーロック」。

そのアニメが2022年10月からスタートし、

2023年3月放送の24話まで駆け抜けました。

そして満を持して登場したのが

今作『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』なのです。

 

さて、「ブルーロック」とはなんぞや?

全然知らない方もいらっしゃると思いますので、

軽~くですが、ご説明させて頂きます。

ブルーロックは日本フットボール連合が

「日本をW杯優勝に導く世界一のストライカーを養成する」という目的の元、

「青い監獄プロジェクト」というプロジェクトを起ち上げ建設された施設の名称です。

最新鋭のトレーニング設備、フィジカル監視システムとサッカーが出来る環境、

そこに加えられた逃げ出すことの出来ない厳重な監獄システム、

それがブルーロックなのです。

 

そこにユース世代(18歳まで)の才能あるフォワード300人を招致し、

失格者が出るトレーニング/ゲームを実施していき、

ふるいにかける事で才能あるものを絞っていくバトルロワイアルの様な、

言わばデスゲーム形式の戦いが行われていきます。

トレーニング失格者には日本代表入りの資格を永久に失うという

厳しいペナルティが課せられ、施設に閉じこめられ、

極限状態でサッカーに打ち込む者の中に

未来の世界一のストライカーを見出そうという狂気に満ちた計画こそが、

先にも書かせて頂きました「青い監獄プロジェクト」なのです。

そんな中に放り込まれた何も知らない300人のストライカー達。

初めは戸惑うものも多くいますが、いつしかブルーロック内では己のベストを尽くし、

最強のフォワードとなるべく戦う中でその才能を開花させ、

自分の強みを見つけるものが現れ始めます。

この物語の原作「ブルーロック」の主人公・潔 世一(いさぎ よいち)は

施設の中でその才能を開花させた一人です。

原作では常に潔視点で物語が進み、潔とその仲間たち、ライバルたち、

という感じで物語が進みます。

 

『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』はそんな潔の裏で別のチームとして躍動する天才、

凪 誠士郎を主役にたて、凪がどの様な経緯でこの青い監獄プロジェクトに選抜され参加する事になったのか、

第一次選考(チーム総当たり戦)で潔と出会い、どんな風に考えてプレイし、

どんな風に心境が変化していったのかを主軸に置いて描かれます。

また、凪 誠士郎がサッカーをプレイするきっかけになったパートナー

御影 玲王の心情や行動も物語に多く含まれているのも非常にファンとしてはありがたく、

今作を観て嬉しいポイントでした。

普段は見る事が出来ない主人公・潔の敵側の視点で描かれた潔との対戦。

それが物語の軸になっており、非常に面白い試みだと感じました。

言うならば視点を変えた副音声でみる同一試合という感じで、

全然見え方が違うというのが面白かったです。

また御影 玲王、剣城 斬鉄というキャラクターの良さや、

面白さが原作よりも一層際立っていて、寮内での会話や、

やり取り一つをとってもキャラクターをより一層好きになる

素晴らしい仕上がりになっている様に感じました。

 

第二次選考の終了までが描かれたアニメシリーズ。

原作もかなり物語的に進んでいます。

こんな風に素晴らしい劇場版を見せられると

やはりアニメ的にもその先を期待せざるを得ません。

TVシリーズ第2期の制作も発表された様ですのでファンはまずこの映画から、

そして知らない方もこの映画を観て、

そして第1期のアニメ24話を追いかけてみるのも良いかも知れません!

 

映画館で、観戦感覚で観るスポーツアニメが最近の流行です。

『THE FIRST SLAM DUNK』、『劇場版ハイキュー!!ゴミ捨て場の決戦』など、

素晴らしい作品が色々上映されておりますが、

『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』もまた熱のある素晴らしい作品です。

一風変わった設定のサッカーアニメではありますが、

スポーツの熱をしっかり内包した最高のエンターテインメントです。

あべのアポロシネマで『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』を是非ご鑑賞下さい。

皆様のお越しをスタッフ一同心よりお待ち申し上げております。

 

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ふじもと

 

ここ最近はボードゲームにハマっています。

「ITO」「おばけキャッチ」「あてっこどうぶつ」など…面白いです。

2024年4月19日(金)公開『あまろっく』 »

出演:江口のりこ/中条あやみ/笑福亭鶴瓶/他

監督:中村和宏

 

 

こんにちは。アポロシネマです。

本日は尼崎を守る「尼ロック」がタイトルの由来ともなった(由来というか、そのままですね。)映画『あまろっく』をご紹介します。

 

まずは「尼ロック」の説明から。正式名称は兵庫県尼崎市にある尼崎閘門(あまがさきこうもん)。英語で閘門はLockGate(ロックゲート)であることから尼ロックという愛称で呼ばれています。船舶が通航できる巨大な閘門で、尼崎市の「0メートル地帯」に海水が流れ込むのを防いでいて、2018年9月にあった台風21号では、尼ロックのおかげで尼崎の被害は少なかったと言われています。

その「尼ロック」をなぜタイトルにしたのか。これは映画を見て頂ければわかるはずです。

 

「人生に起こることは何でも楽しまな!」が口グセの能天気な父に育てられた優子は、父親を反面教師に幼少期から勉強でも何でも全力で励み、大学卒業後は東京の大手企業で働いていた。しかし理不尽なリストラで失業し、39歳・独身にして再び尼崎に戻ってニートのような毎日を送ることに。

そしてある日突然、父が再婚すると言いだし、20歳の早希を連れてきた!?

突然あらわれた自分よりずっと年下の“母”の登場に戸惑う優子は、父と早希との共同生活を受け入れることができなかったが、ある事をきっかけに優子はこれまでの人生を振り返り、家族の“本当の姿”に気づいていく。

 

タイトルの通り、舞台が“尼崎”のご当地ムービーなのですが、監督も尼崎出身で、構想から6年かけてやっと映画になったそうです。父の口癖も自身の阪神・淡路大震災の経験から生まれたセリフから来ているとの事。映画の豆知識です。

 

歳の差婚すぎるけど、こんな家族も存在するのかも?知れない……?と思わせる凸凹家族。

主人公で、頭は良くて出来すぎてしまう優子を演じるのは、江口のりこさん。

劇中でボート部のシーンがあるのですが、練習のためにボートを漕いでたら楽しかったとハマった模様。このボートが色々思い出とつながっていくのも素敵なんですよね。

全てのシーンに説得力があり、凄いです。いろんな顔を見せてくれます。

そして孤独な幼少期を過ごし、誰よりも“家族だんらん”を夢見る、父の再婚相手・早希を演じるのは、中条あやみさん。われら阿倍野の星!早希の明るい性格が、彼女の可愛い笑顔と滅茶苦茶似合っていて、“めんどくさい”家族を明るく照らす太陽の様な存在です。竜太郎が惚れたのは可愛さだけではないと思います。強い母です。

そして早希と再婚する父・竜太郎を演じるのは、笑福亭鶴瓶さん。

口癖がピッタリなのは想像しただけでもわかりますよね。“お父ちゃん”って感じです。

一緒のシーンはないですが、初の親子共演として屋台の亭主役に息子の駿河太郎さんも出てきますのでお楽しみに(笑)。

その他の役者さんも関西の方々です!

この会話、隣の家庭で行われているのではないか?(笑)親近感が湧くのもご当地ムービーのいい点ですね。

 

映画を観た後に尼崎でロケ地巡りもいいかもしれません。

心地の良い春の日が続いています。是非あべのアポロシネマでご鑑賞ください。

 

※本映画は阪神・淡路大震災の被災映像が含まれております。予めご了承ください。

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せきぐち

春なのに暑いですね。夏になったらどうなってしまうのでしょうか…。

2024年3月24日(金)公開『四月になれば彼女は』 »

出演:佐藤健/長澤まさみ/森七菜/仲野太賀/他

監督: 山田智和

 

あべのアポロシネマです。

本日はプロデューサーや作家、脚本家として多くの作品を世に送り出してきた川村元気さんが書いた原作小説を、ミュージックビデオを中心に多く手掛けてきた映像作家の山田智和さんが監督し実写映画化した今作、『四月になれば彼女は』のご紹介です。

 

『君の名は。』以降の新海作品や『電車男』や『デトロイト・メタル・シティ』、『モテキ』など数多くの実写話題作を手掛け、プロデューサーとしてのその名を馳せてきた川村元気さん。

『世界から猫が消えたなら』や『億男』など自身で書いた小説でも大ヒットを量産し、近年では自らの原作を監督し映画化した『百花』も記憶に新しいですね。

そんなマルチに活躍するヒットメーカーである川村さんが2016年に出版した原作小説を米津玄師の「Lemon」やあいみょんの「マリーゴールド」など素晴らしいミュージックビデオ(MV)を多く手掛けてきた山田智和さんを監督に立てて実写化、しかもそれが山田さんの長編映画監督初挑戦だというから驚きました。

私は映画を観た後に監督を知ったのですが、あー、あのMVの監督!あのMVもか!という感じで、確かにこれだけ多くの良い作品を残している映像作家さんが良い映像を撮れない訳が無い、と。

作品内でもシーン毎にバッチリ最高の画をはめてくれていて、良い画だなーと映画中何度も感じる事が出来たのも凄く納得出来ました。

ボリビアのウユニ塩湖、チェコのプラハ、アイスランドのブラックサンドビーチの映像の美しさは勿論の事、日本での浜辺の映像や差し挟まれる青い空の映像や動物園の映像など美しくて儚い作品の雰囲気にマッチした素晴らしい映像になっていました。

山田監督の説得力のある絵と川村さんの作った緻密な物語とそれを上手く映像化の為に落とし込んだ脚本が全てマッチして、物語を完成させる、というのはこういうものを言うのだろうな、と思わされる素晴らしいものに仕上がっていました。

 

さて、主人公は佐藤健さん演じる藤代俊。

川村さん作品が映画化される際、佐藤さん率が凄く高い気がします(『世界から猫が消えたなら』も『億男』も主人公は佐藤さんでしたね)。

佐藤さんの演じる藤代は00年代以降の空気感を纏った優しい、どこか諦めた感じのある青年です。

これが本当に佐藤さんにはまっていて最高でした。

年齢が作中で明かされる事はありませんが、計算した感じ30代中頃と思われます。

そして現在の藤代の彼女、坂本弥生役に長澤まさみさん。

婚約を決めた二人が結婚の準備をしている時に彼女が失踪してしまうところから物語が始まります。

そんな彼女との回想と、もう1人。

別れて10年経ってから藤代の元に手紙を送ってきた初恋の元恋人伊予田春。

演じるのは森七菜さん。

2つの恋の回想を交えながら物語は進んでいきます。

作品冒頭で語られる「結婚すれば愛は2年で情に変わる」という言葉と、それに紐づく一般的な常識。この作品は一貫して様々な形で愛を失った人々が愛を求めて再び愛し愛される為に足掻く物語です。多くの一般のラブストーリーの先にある物語の延長の様な、バッドエンドの先に見る希望のような部分を描く物語になっています。

普段なら語られない物語の先が見られる、そんな気分で観て頂ける作品になっており、普通の恋愛映画とは全く違った角度から語られる物語であるがゆえに、その愛がどれ程大切で尊いものであったかを思い出すことが出来るというこの物語の構造の巧みさが本当に際立った作りになっています。

 

最後にあと一つ、音楽を担当したのはMr.Childrenの元プロデューサーとしても知られるJ-popの巨匠小林武史さん。

映画音楽だけでも『稲村ジェーン』『リリイ・シュシュのすべて』など挙げだすとキリがないほど素晴らしい仕事をされてきていますが、今作でも勿論大健在でございました。

エンドロールで名前を確認して大納得。

『世界から猫が消えたなら』も小林さんだったのでここも実は再タッグだったんだな…と。

そしてエンドロール中にかかる主題歌は藤井風さんの「満ちてゆく」。

これが観た後の心に本当に沁みます。

脚本映像音楽全て完璧に配置されていて、ここまで計算されているとは…という感じです。

 

一言一言がゆっくり語られ、その一言一言がしっかり実感と重さを含んでいる。

そういう物語のリアルさがこの作品にはありました。

どの言葉にも説得力があり、身につまされる思いもしつつラストには本当に爽やかな気持ちになれる作品です。

ラスト30分はこの物語に終わって欲しくない、ずっと見ていたいと思う程、私はこの作品が流れるスクリーンに入り込んでしまいました。

皆様にも是非この機会にあべのアポロシネマで『四月になれば彼女は』をご鑑賞されてみませんか。忘れていた気持ちや感情を思い出す切っ掛けになるかもしれません。

あべのアポロシネマでそんな体験を是非してみてください。

皆様のお越しをスタッフ一同心よりお待ち申し上げております。

  

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

最近好きなゲームのピンバッジを買いました。

海外からの取り寄せだったので5000円くらいしました。

2023年11月3日(金)公開『ゴジラ-1.0』 »

出演:神木隆之介/浜辺美波/吉岡秀隆/佐々木蔵之介/他

監督:山崎貴

 

あべのアポロシネマです。

本日は『ALWAYS 三丁目の夕日』や『永遠の0』など数々のヒット作を生み出し続ける山崎貴さんが監督・脚本・VFXを務める最新作『ゴジラ-1.0』のご紹介です。

 

今作『ゴジラ-1.0』は特撮怪獣映画『ゴジラ』シリーズの37作目。

国産の実写作品としては節目の30作目、前作庵野秀明さんが監督した『シン・ゴジラ』から実に7年振りの新しいゴジラであり、ゴジラ生誕70周年記念作品というある種記念碑的な作品でもあります。

ゴジラといえば国民的人気の超有名怪獣ではありますが、子供の頃から怪獣映画や特撮作品、アニメ作品などに全然触れて来なかった私としましては、実は非常に馴染みがない生き物なのです。

小学校の時、友達がゴジラを凄く好きで、よくその話を聞いていた記憶はあるのですが、見るには至らず。

しいて言うならメカゴジラのラジコンはなぜか持っていました。

何故メカなのか、等あんまり意味は判らないけれどそれはそれで楽しく遊ばせて頂いてはおりました。

今までも多く映画が上映されているのは映写の仕事をしながら横目に確認して参りましたが、どれも最初から最後まで見るというタイミングはなく、スルーして生きてきた訳です。

そして遂にこの時が来た、と。

この仕事に就いたからには、ゴジラとも対峙せねば。

初めてのゴジラ映画、前知識ゼロという非常に稀有な状態で、見て参りました『ゴジラ-1.0』。

これがですね、結論から言わせて頂くと〝とにかく凄かった″です。

上映時間2時間4分28秒、スクリーンに釘付け、物語の構成にもゴジラの迫力にも人々の思いと戦いにも圧倒されました!

これか、この感じを皆味わいにゴジラ映画を観に行っているのか!と。

ゴジラめっちゃ怖いやん!ゴジラって動物なんや!と。

40年間触れて来なかったゴジラに初めて触れて知る事実。

 

ゴジラって怖いんや。

 

VFX日本最高レベルの山崎監督が描くゴジラの恐ろしさ、凄いです。

とんでもないです。

語彙が死んでいますが、今日だけはお許し下さい。

ゴジラという存在そのものが災害とでも言うべき未知なる生き物、‟怪獣″が日本に上陸してくるという恐怖、これがとんでもなくクオリティの高いVFXで実にリアルでダイナミックかつ繊細に描かれていく様は本当に凄かったです!

 

そして物語を通して描かれる終戦直後の動乱の日本を必死で生きる人々と、負けてしまった戦争への思い。

破壊と再生、そしてゴジラという新たな脅威。

これを一本の物語にしっかりとまとめ上げ、作品に昇華した山崎監督の手腕には本当に称賛しかありません。

敗戦後の復興の中で逞しく成長していく人々と、街。

人間ドラマがしっかりと描かれるからこそ、このゴジラというキャラクターの無慈悲さ、無差別さと恐ろしさが一層際立つ構造は本当に‟素晴らしい″の一言。

そこに登場する、どの人物にも共感出来てしまう、日本という国で暮らす人々の生き様とそれぞれの戦い。

それらを克明に描いた物語が今作『ゴジラ-1.0』なのです。

主人公役の神木隆之介さんとヒロイン役の浜辺美波さんという朝ドラコンビが素晴らしいのはさることながら、吉岡秀隆さん、山田裕貴さん、安藤サクラさんなど脇を支える俳優陣も完璧で、物語にどっぷり浸かって芯から楽しむ事が出来ました。

また、往年のゴジラのメインテーマが劇場内に鳴り響いた時、「うわ、この曲知ってる!」と思って本当に気持ちが昂りました。

ゴジラのテーマ曲がこれ程上がる曲だったとは!

物語の本当に良い所でかかるので、今作を見られる方は是非心待ちにして頂きたいところです。

 

2023年に相応しいクオリティの特撮怪獣映画『ゴジラ-1.0』がいよいよ11月3日から公開されます。

戦後の傷が癒えきらぬ日本を新たな災害、‟ゴジラ″が襲います。

この迫力、このインパクトを是非映画館のスクリーンと音響で100%体感して楽しんで頂きたいと思います。

1954年の初代『ゴジラ』や『シン・ゴジラ』なんかも見てみたいな、と過去作に興味が出るほど素晴らしい出来でした。

あべのアポロシネマでは皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

 

 

 

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

ゴジラって他の怪獣と戦って日本を助けてくれるウルトラマンみたいなタイプの怪獣だと思っていたので驚きました。めっちゃ襲ってくるしめっちゃ壊してました。野性でした。

 

2024年3月15日(金)公開『FLY!/フライ!』 »

声の出演:堺雅人/麻生久美子/黒川想矢/池村碧彩/他

監督: バンジャマン・レネール

 

 

こんにちは、アポロシネマです。

今日紹介する『FLY!/フライ!』は、『ミニオンズ』や『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』で有名なイルミネーションが手掛けた『SING/シング』以来7年ぶりの完全オリジナルストーリーです!

 

アメリカ(北東部)ニューイングランドの小さな池に暮らすカモの家族。住み慣れた池を一度も出たことのない彼ら。新たな居住地へ移動中に池に立ち寄った渡り鳥に感化され、はじめての大移動(お引越し)を一大決心!!目指すはカリブ海の輝く楽園・ジャマイカ!目的地へ向かう3,000Kmの道中で彼らが見つけたものとは!?

 

流石『ミニオンズ』を手掛けるイルミネーション。カラフルな色使いで目を楽しませてくれるだけでなく、カモの一家全員、目の中に入れても痛くないほど、ハートフルでキュートないい家族!可愛い上、観ていて元気が湧いてくる!愛おしい作品です。

 

その声優も豪華で、お父さんのマックには堺雅人さん。お母さんのパムには麻生久美子さん。過保護過ぎるお父さんと夢見るお母さん。池の外の世界への考え方は真逆、凸凹だけれどお互い認め合っている仲の睦まじい、まさにオシドリ夫婦!

子供たちもとっても素敵な子たちで、息子のダックスには『怪物』で日本アカデミー賞新人賞を受賞したことが記憶に新しい、黒川想矢さん。まだ14歳なんですね。思春期だけど、優しいお兄ちゃんがピッタリ。

娘のグウェン。このグウェンが可愛い!!(本当の女の子みたい、カモだけど)と思っていたら、舞台版の『SPY×FAMILY』でアーニャ役を演じた池村碧彩さんだったのですね。

めっちゃピュアピュアな女の子(カモ)だと思ったら、本当に小さな女の子(人間・7歳)だった!

そりゃー、ナチュラルすぎだ!!でも年齢だけで選んだのではないと思うのが、グウェンというキャラクターが声(感情)を発している(演技している)!!という事。

総括すると、この一家が可愛くて堪らない!

私も渡り鳥になろうかと思ってしまいました。一緒に旅したいな。

 

そして作品の本編前には、短編アニメーション『ミニオンの月世界』の上映もあります!

大人気『怪盗グルー』シリーズの第1作目で2010年に公開された『怪盗グルーの月泥棒』の後日談で、月に追いやれてしまったグルーの敵役ベクターが月からの生還を果たすべく奮闘する作品です!

短編アニメなので『ミニオンの月世界』を見たことの無い方も楽しめますよ!

もちろんミニオンも出てきますよ!!

 

春から新生活の方も、変わらぬ日常な方も、この作品で元気をもらってください!

ぜひアポロシネマでご覧ください。

 

 

 

 

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★☆執筆者紹介☆★

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せきぐち

空を飛びたいという理由で鳥に憧れる気持ち、とってもわかります。鳥になったら高所も怖くないと思います。

2023年10月8日(金)公開『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』 »

出演:福原遥/水上恒司/伊藤健太郎/松坂慶子/他

監督:成田洋一

 

あべのアポロシネマです。

本日はCMディレクターとして有名な成田洋一監督の長編映画初監督作品『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』のご紹介です。

 

この作品「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」は汐見夏衛(しおみなつえ)さんのデビュー作で、小説投稿サイト「野いちご」でケータイ小説として公開されTikTokで話題となり大ヒットしました。

単行本はシリーズ現在までに累計発行部数85万部を記録し、その後に出した「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」も同じようにヒットし、今年映画化されたのも記憶に新しいですよね。

若年層から特に支持が厚く、どちらの作品もコミカライズ(漫画化)と実写映画化が行われている今をときめく人気作家です。

 

この作品は現代を生きる女子高生である加納百合が主人公です。

自分を苦労して育ててくれている母に我儘を言い喧嘩をして家を飛び出してしまいます。

そして行く当てがなく、古い防空壕で寝てしまったことから第二次世界大戦終戦間際、あと2カ月で終戦という昭和20年6月にタイムリープしてしまうという物語で、

その時代を生きる人々の苦しい暮らしや死生観に触れ、あと2カ月で日本が敗戦する事を知っているが故にもどかしさや己の無力さを感じながらタイムリープしてしまった戦時中の日本で懸命に生き、

その中でもう一人の主人公である特攻隊員の佐久間彰と恋に落ちるという戦争恋愛映画になっています。

苦しい時代を明るく生き、自分の死で自らの大切なものを守ろうとする特攻隊員達や軍指定の食堂を経営し、そんな特攻隊員達を美味しいご飯で精神的に支える食堂の女将など苦しい時代にも笑顔を絶やさず懸命に生きるキャラクター達が沢山出てきます。

特に特攻隊員たちのキャラクターはそれぞれの色がしっかりしていて、物語が非常に見やすく判りやすいものになっています。

物静かで穏やかな主人公彰を演じる水上恒司さんと騒がしくてムードメーカーな石丸を演じる伊藤健太郎さんの演技は本当に素晴らしく、見るものを引き込む存在感を放っていました。

他にも全員の弟分である板倉、堅物で軍人としての誇りを持つ加藤、頼りない年長者寺岡など、それぞれの立場とそれぞれの想いがありながらいつ出撃命令が出てもおかしくない日々を共に過ごす仲間はどの方も本当に素晴らしい演技でした。

そしてそんな明日をも知れぬ隊員達を常に案じ、自分の私財をなげうってでも特攻隊員の食べ物を調達し支え続ける献身的な女将ツル。

松坂慶子さんが演じるこのキャラクターの深い愛は本当にスクリーンを涙なしで見る事が出来ません。

そしてそんなツルに助けられ、鶴屋食堂に住み込みで働くことになった百合。

現代の少女百合は果たして何を思うのか…。

 

さて、この作品は沖縄諸島に上陸した米軍と英軍を主体とする連合国軍と日本軍との間で行われた沖縄戦において劣勢の日本軍が最後の抵抗として昭和20年3月26日から7月19日迄行われた特攻作戦が基になっているお話です。

南九州や九州中に多く存在した軍事飛行場(特攻基地)をモデルに描かれており、実は物語の中心になる食堂や女将さんにもモデルになる人物がいたり、物語のバックボーンがしっかりしている事がこの物語の悲劇性を一層深いものにしています。

そして、だからこそ主人公の二人、百合と彰の恋愛が一層悲しい物語になっているのです。

 

最後にこの映画の主題歌を歌うのは福山雅治さん。

この映画の為に書下ろした新曲「想望」(そうぼう)は本当に素晴らしいバラード曲です。

「想望」とは、「慕い仰ぐこと。心に思い描いて待つこと」という意味だそうで、最後のエンドロールでは歌詞字幕付きで聴くことが出来ます。

これだけでも聞く価値ありの名曲なので、映画の終わりはそれも是非楽しみにして頂ければと思います。

 

さぁ百合と彰の恋の行方はどうなってしまうのか、百合は現代に戻って来られるのか、物語の続きが気になった方は是非あべのアポロシネマのスクリーンでこの恋の行方を見届けに来て下さい。

是非ハンカチのご用意を忘れず映画館へお越しくださいませ。

スタッフ一同皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

 

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

最近たこ焼きにハマっているのですが、どこのたこ焼きを食べても美味しいです。

美味しくないたこ焼きに出会った事がないかも知れません。

2023年7月14日(金)公開『君たちはどう生きるか』 »

原作・脚本・監督: 宮崎駿(※「崎」は正式には「たつさき」)

 

 あべのアポロシネマです。

本日はスタジオジブリ最新作、引退作と言われていた『風立ちぬ』から10年、宮崎駿監督が遂に帰って参りました。

宮崎監督の完全オリジナルによる新作映画『君たちはどう生きるか』のご紹介です!

 

 1937年(昭和12年)に子供たちの為に書かれた吉野源三郎の小説「君たちはどう生きるか」。

自由とは、生産関係とは、ヒューマニズムとはという難しそうな内容をコペル君という主人公を通し、学校であった様々な出来事を例に取りながらおじさんとノートでやり取りを交わす事で、より共感出来るように、よりわかりやすく理解できるように一緒に考えていこうという本です。

軍国主義に流れていく世論を憂いた山本有三、吉野源三郎らが子供たちにこそ考えて欲しいと出版した本で、日本の児童文学の倫理小説の草分けとして、未来に希望を託す思いを非常に感じる一冊です。

今読んでも様々な気づきが得られる素晴らしい本で、人の持つ普遍性というものを非常にわかりやすく本に落とし込んだ作品だと思います。

第二次世界大戦が始まる1939年(本が発売して2年後)には言論統制により本の販売は停止され、戦後まで再刊はされる事はありませんでしたが再び刊行されてからは、今なお読み継がれる作品となっています。

また、数年前にこの小説を原作に漫画が執筆され200万部を売り上げ大ヒットしたのも記憶に新しいところです。

そんな作品に幼少期から触れ、強くインスパイアを受けていた宮崎監督が作品としては完全にオリジナルではあるものの、タイトルをこの本から取り、6年かけて作り上げた新作が今作『君たちはどう生きるか』なのです。

 

この作品は今までの作品と違い、宣伝や広告を一切使わず、予告編や公式サイトも一切作らず、どんな内容になるのかどんなキャラクターが登場するのかなど一切語られる事なく作られました。

ここまで徹底して内容を明かさず、試写会なども一切行わず、誰も内容を知らないまま公開まで漕ぎつけたのは本当に異例の事と思います。

パンフレットも公開日からではなく公開後発売予定とのことで、何も前情報を入れずに映画館で観て下さいという、制作サイドの強い意志を感じずにはおれません。

元々、私はこの作品のタイトルを見て吉野源三郎原作で、本の内容を踏襲したアニメ作品になるのだろうと思っていましたが流石、宮崎駿監督はとんでもないです。

内容はあくまで完全オリジナル。

そして物語は若々しいファンタジー作品になる、という事前情報があり、「君たちはどう生きるか」でファンタジー作品になる、という事実に混乱と驚きの感情が渦巻いたのを憶えています。

見ればわかる。

そう宮崎監督に言われている様な気さえしますが、やはり映画は見なければわからない事ばかりです。

公開数日でネット上はネタバレの嵐になっていますが、それをたとえ読んだとしても、やはり自分の目で確かめて頂きたい作品になっています。

勿論情報を入れずに見て頂くという映画体験が1番素晴らしいのは間違いないのですが、こんな世ですから嫌でも目にネタバレが飛び込んで来ることは、いくらでもある事と思います。

例えその文章が重大なネタバレであったとしても、皆様がこれから感じる新しい映画体験を体験として損ないきる事は決してないのです。

私はそれぞれの映画が持つ画の力というものを特に信じているのですが、どのシーンを切り取っても、その前後が気になる様な引き寄せる画を持っている映画は、やはり素晴らしい映画が多いように感じます。

なんだ今のシーン、どうなっているんだ?が連なって出来ている映画のなんと素晴らしい事か。

そしてこの『君たちはどう生きるか』がそういった惹きつける画を無限に持った作品であるという事をここに明言させて頂きたいと思います。

 

そして最後に。

ジブリと言えばその安定した作画力、表現力が有名で、ジブリならではのものが沢山ありますよね。

炎や木々の揺らめきや躍動感あるキャラクターモーションなどやっぱりジブリでしか味わえないものが沢山あるなと改めて感じました。

映画の冒頭のシーンの表現などは昔からジブリで見られるものでありながら、新しい表現方法を感じられ、今なお進化を続けるチャレンジ精神に身震いする様な感動を覚えました。

それでこそジブリ。

まだもっと見ていたい。

この映画はそんな気持ちにさせてくれる作品です。

 

宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』はその問いを我々に問いかける作品ではなく、吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」という〝問い″にひとつの答えを提示する様な作品だと感じました。

その強さを目にして皆様が何を思われるかは皆様次第であり、そんな話を色々聞きたくなる作品である様に感じました。

是非出来るだけ情報を入れず、出来れば吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を読んで頂いて、(アポロビル2Fにある喜久屋書店でお求めいただけます)そして映画を楽しんで頂ければ、と思います。

このメールマガジンが皆様のかけがえのない映画体験の一助となれば幸いでございます。

 

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

冬の食べ物が恋しいけど暑くて無理なのでなんとかなりませんか。

鍋とかおでんとかが食べたいです。

2024年3月1日(金)公開『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』 »

声の出演:水田わさび/大原めぐみ/芳根京子/吉川晃司/石丸幹二/他

監督:今井一暁

 

 

こんにちは、アポロシネマです。

今年もドラえもんの季節がやってきました。「映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)」を紹介いたします。今回は、原作者の藤子・F・不二雄さん生誕90周年記念作品!音楽をテーマにのび太たち5人(ドラえもん、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫)が地球を救うために奮闘します!!

 

学校の音楽会に向けて、苦手なリコーダーの練習をしているのび太の前にあらわれた不思議な少女・ミッカ。

彼女は音楽がエネルギーになる惑星でつくられた“音楽【ファーレ】の殿堂”にドラえもんたちを招き入れる。ミッカはこの殿堂を救うため、一緒に演奏をする音楽の達人【ヴィルトゥオーゾ】を探していたのだった。ミッカと共に演奏することで、少しずつ殿堂を復活させていくドラえもんたち。

しかし、世界から音楽を消してしまう不気味な生命体が迫ってきて、地球にも危機が・・・!!

はたして、“音楽の未来”、そして地球を救うことができるのか!?

 

タイトルの『交響楽(シンフォニー)』の文字通り、吹奏楽の音楽がベースとなり、みんな違う楽器を演奏するのですが、どの楽器も音楽を楽しめば楽しむほど上達する……。

とても楽しそう。

そう、彼らにはひみつ道具「音楽家ライセンス」があるのです!

このひみつ道具、私の人生にも欲しかった!!!

そういえば学生時代、吹奏楽部大人気だったな~とふと思いました。

ひみつ道具があるとはいえ、音楽を楽しむにもやる気は必要になってきますのでお気を付けください!!

のび太君はのび太君くんだな~ヤレヤレ……とドラえもんの苦労が伝わってきます(笑)

不器用なのび太君の演奏の練習にもみんなで手伝ってくれる、いい仲間です。

 

そして今回の主題歌はVaundy。よく聞く歌手の名前だ(でも聞いたことがない。)と思っている方はエンディング流れますので、お楽しみに。

彼の曲は毎回イメージが違い楽しいですね!今回の曲は少しゆったりとしたメロディーが心地よく、心が温かく包まれるものになっています。本編の“音楽”とは違うタイプの曲なのに、この映画と惹かれ合っているのです。歌詞にも僕のポケットという歌詞が出ていて、情景が目に浮かぶ、とにかく良い曲です。

しかも声優にも挑戦しており(ビックリ!)、どのキャラクターの声を担当されたのかは、ニュースでお調べいただくか、鑑賞時のお楽しみにしてください!因みに私は気が付きませんでした!(エンドロールで思い出しました。)

 

“音楽”って、言葉や言語と同じく色んな種類があり、音を出すだけでも意図せず自然と音楽を奏でる事が出来る素敵なものですよね。映画にも色々な音楽・音が出てきて、世界には音楽(または音)が溢れているのだなあと改めて感じられました。

ぜひあべのアポロシネマのスクリーンにて、素晴らしい音楽の奏をお楽しみください。

 

 

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★☆執筆者紹介☆★

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せきぐち

春は花粉が飛びますね……、嫌になるのはその部分くらいです。