2024年6月28日(金)公開『ルックバック』
声の出演:河合優実/吉田美月喜/他
監督:押山清高
あべのアポロシネマです。
本日は少年ジャンプで「チェンソーマン」を連載する人気作家、藤本タツキさんの原作を押山清高監督がアニメーション映画化した傑作『ルックバック』のご紹介です。
藤本タツキさんの代表作と言えばやはり連載2作目の「チェンソーマン」です。
この作品は「鬼滅の刃」、「呪術廻戦」と同時期に少年ジャンプで連載され大ヒットした作品です。
同じ紙面で王道の名作達に囲まれながら、「チェンソーマン」は少年誌において、いわゆる王道とは一線を画す、ダークで乾いた世界観で多くのファンを魅了し、アニメ化もされ、話題作として大きな注目を集めました。
現在はジャンプ+で「チェンソーマン」の第2部を連載中で、そちらも話題に事欠かない人気作となっております。
さて、この映画『ルックバック』の原作はチェンソーマン第1部が終了したのち、第2部の連載が開始される迄の間に1年ほど期間があり、その間に読み切りの短編としてジャンプ+で発表された漫画作品になります。
読み切りと言いながら143ページもあり、描きたいものを自由に納得できるまで描くという意思を感じさせ、短編と呼ぶには大ボリュームな作品が当時Twitter(現X)で大きな話題となり、様々な考察と議論がなされたのは記憶に新しいところです。
その描写の繊細さと物語の奥深さが合わさり一時はTwitter上でこの話題が出ない日は無いという位、多くの方の意見を毎日見かけたのを覚えています。
私自身もその時ジャンプ+でこの作品を読み、友人とこの作品や藤本タツキさんの話題で色々と話をしたのを憶えています。
この作品が映画化されるという話を聞いた時、私は本当にハッとしました。
それは何故か。
この作品がどれほど映像を意識して描かれた作品であるかというのを読んだ時に感じていたからです。
定点から漫画を描く背中を映す視点、田舎道を喜び駆ける様を俯瞰で映す視点、ローアングルからテレビを見る姿を映す視点。
どのシーンをとっても映画的で美しく、儚い一瞬一瞬を鮮明に切り取った本当に素晴らしいものだったからです。
藤本タツキさんの繊細な絵柄、細やかなタッチを忠実に再現するアニメーションとして映画化されるなんて、これは凄い作品になるのではないか。
予告編を観た時、私はそう確信めいたものを感じずにはいられませんでした。
そしてその予想は見事過ぎる程に現実になりました。
音が鳴って、音楽が鳴って、時間の流れ、間があって。
声があって、歩みがあって。
全てを、五感で感じる事が出来るからこそ息づく世界がある。
143ページという単行本1冊にしては少ないページ数を余すところなく表現し、描き切った57分14秒。
映画としては短いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、これをあえて90分に引き延ばしたりせず原作の表現を尊重し続けた結果の時間であると私は思います。
作者の描きたかったものを尊重し、表現を解釈してより拡張し、どなたの琴線にも触れる心の機微をしっかりと描き切った作品。
それが今作『ルックバック』なのです。
私はこのメルマガではいつも控えめに表現させて頂いているのですが、今回ばかりは声を大にしてこの作品をお勧めしたいと思います。
大傑作です。
観て絶対に損はない作品です。
この映画は観た後に誰かと話したくなる作品です。
私も本当は内容に踏み込んで色々話してしまいたいところですが、そこをグッと堪えてこのメールマガジンを書いています。
在りし日の漫画を描くという行為、つまりペンとインク、スクリーントーンを使って漫画を描くという行為のもつノスタルジーさや、自分の中にあるものを表現する事の尊さ。
虚像や見栄の中で藻掻くという事。
誰かと支え合い、誰かの救いになるという事。
多くの想いが描かれています。
ルックバックというタイトルである「振り返る」という事、そして「背中を見せる」という事。
これをアニメーションで表現しきった押山監督と、製作スタッフには本当に敬意を表したいです。
もちろん主人公である藤野と京本の声を担当した河合優実さんと吉田美月喜さんの演技力の高さも素晴らしく、あの声あってこそ、この作品に引き込まれたのだと思います。
観終わったら漫画を読み返しても二人の声以外で脳内再生出来ないくらい、二人の声が染み込んでしまいました。
そしてもう一つ、忘れてはならないこの作品の音楽を担当した人物haruka nakamuraさん。
作品に寄り添うという映画音楽のお手本のような素晴らしい楽曲と、エンドロールで流れるharuka nakamuraさんが作曲を手掛け、それをuraraさんが唄う「Light Song」の美しさは本当に心に染み入りました。
映画を観終わってエンドロールで聴くからこそ染み入る楽曲。
これを体験してもらわない手は本当にないと思います。
私はこの作品を観た後、凄くすんなりと「この作品の完成形を観た」と心から思えました。
魂が揺さぶられる57分14秒です。
「描き続ける」という、映画のキャッチコピーで使われたこの言葉。
観終わった今でもペンタブに向って線を引き続けるあの音が脳にこびりついています。
出来れば多くの方にこの作品を映画館の音響とスクリーンで体験して頂きたいなと思います。
皆様のお越しをあべのアポロシネマのスタッフ一同、心よりお待ち申し上げております。
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★☆執筆者紹介☆★
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ふじもと
ブルーレイ出たら買います。