2024年11月13日 (水)

2024年9月27日(金)公開『Cloud クラウド』

出演:菅田将暉/古川琴音/奥平大兼/他

監督:黒沢清

 

あべのアポロシネマです。

本日は出る作品ならどんな作品にも馴染んでしまう、カメレオン俳優と言われる役者、菅田将暉さん主演、『CURE』『回路』などホラー、サスペンス・スリラー作品の大巨匠、黒沢清監督最新作『Cloud クラウド』のご紹介です。

 

今回のこのメールマガジンにはお伝えしたい内容に映画のストーリーの「ネタバレ」を含んでいる可能性がございます。『Cloud クラウド』を観ようとお考えの方の中で事前に何も情報を入れたくない、という方はここから先は読まず観終わってからこのメールマガジンをお読みいただければと思います。『Cloud クラウド』がどんな作品かその魅力を知りたい方、この作品を観ようか迷っている方はここから先をご参考にして頂けますと幸いです。

 

さて、この作品『Cloud クラウド』は「憎悪の連鎖が生む“集団狂気”を描くサスペンス・スリラー」と銘打たれた作品なのですが、観た後に映画から感じた印象が想像していた内容とだいぶ違ったのでその辺を中心に今回はお話させて頂きたいなと思います。

主人公の吉井(菅田将暉)はクリーニング工場で真面目に働く青年です。

責任がのしかかる昇格を嫌がり、目立たず暮らしたいと願う青年です。

そして副業として最近話題の「転売」を行い、安く仕入れた商品を高額で転売する事でお小遣い稼ぎをしているという感じの青年です。

ある時倒産した工場で作られていた大量の医療機器を安く仕入れ、それを高額で転売する事に成功した事で人生が一変します。

大金を手にした事で仕事を辞め、都心から離れた田舎に自宅兼事務所をかまえ、在庫を事務所で管理しながら転売業で生計を立てる様になります。

そして冒頭にあった憎悪の連鎖が生む“集団狂気”に飲み込まれていく、という感じなのですが、まず物語が二部構成になっています。

前半はサスペンス・スリラー的な要素が詰め込まれた「吉井青年が世の中の全てから恨みを買っていく」フェーズです。

このフェーズでは吉井青年の無気力な人間性と行動によって静かながら背筋がゾワゾワする映像がずっと続きます。

このスリラーともホラーともいえる空気感の中で味方がどんどん減っていき、孤立していく中で目に見えぬ憎悪だけが溜まっていく演出は流石、黒沢監督だと思わせられました。

なんとも言えない胸のザワザワ感がしっかりスクリーンに封じ込められていて、この口で言い表せない感覚を映画で楽しめる感じが、この映画ならではの良さの様な気がしました。

全く別人の人生を追体験できるという映画の古くからの楽しみ方が、この映画にはしっかりとパッケージングされていて、黒沢清監督の力量を感じさせます。

そして物語の後半部分、これが大分当初のイメージと違って驚いたのですが、ここから北野映画ばりのバイオレンスアクションが展開されます。

とんでもないバイオレンス映画に早変わりしスクリーンの中では大銃撃戦が繰り広げられます。

この前半の淡々とした静けさと後半の暴力性という緩急。

そして主人公吉井の混乱がヒシヒシと伝わる映像の面白さがこの作品の肝だと強く感じました。

この後半の唐突で強烈なバイオレンス展開の鮮烈さが前述させて頂いた「憎悪の連鎖が生む“集団狂気”を描くサスペンス・スリラー」という文言を吹き飛ばす位のパワーがあり、観た後の感想を大きく変えてしまう要因だと感じました。

私も映画を観るまでは5chやSNSなどの見えない敵や悪意に襲われながら精神的に追い詰められていくサスペンス・スリラーもの、みたいなイメージでこの映画を捉えておりましたがとんでもない!

この作品はめちゃめちゃシンプルに各所で恨みを買って、めちゃめちゃシンプルに暴力で迫られるという至極シンプルな物語なのです。

いや、これ凄かったです。

観たい感じとズレていく感覚の楽しさ。

全てが想像の斜め上をいく面白さ。

ただあまりに思っている感じとズレ過ぎると、思っていた映画と違う!というショックもあるかと思い、この場をお借りしてご説明させて頂きました。

割と頭を空っぽにして、細かい事は取りあえず置いておいて、全てを受け入れられるオープンマインドでこの映画に臨んで頂く事を強くおススメいたします。

後半のギラッギラの空が映った画が本当に黒沢清の画そのものでうわー、黒沢清!黒沢清の空!と。本当に感激しました。

俳優陣も全員薄暗く生気の抜けた演技で、その不気味さが際立つ最高のものでした。

この演技を2時間浴びるだけでも十分にご満足いただけます!

転売で稼ぐ主人公・吉井良介役の菅田将暉さんは勿論、吉井の恋人・秋子役の古川琴音さん、転売のバイト青年・佐野役の奥平大兼さん、ネットカフェで恨みを募らせる男・三宅役を岡⼭天音さん、吉井が働くクリーニング工場の社長・滝本役を荒川良々さん、そして今作で特に不気味さ、気持ち悪さが際立った転売業の先輩・村岡役を熱演した窪田正孝さん。どの人も本当に何を考えているのか全然判らず普通に会話しているだけでずっと怖いです!

 

さぁ皆様、『Cloud クラウド』に興味を持っていただけましたでしょうか。

この文章で皆様に少しでもこの映画の持つ虚無感や暴力性、そしてそれらを映画にギュッと閉じこめ、見事にパッケージングした手腕の素晴らしさが伝わりましたら幸いでございます。

是非スクリーンでこの映画を観て、映画でしか体験できない新たな扉を開けてみて下さい。

あべのアポロシネマスタッフ一同皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

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★☆執筆者紹介☆★

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ふじもと

 

ゼスプリ・サンゴールドキウイが美味しいです。

あの黄色いやつです。

やめられません。